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大前研一ニュースの視点

英総選挙/英スターマー政権/フランス総選挙

▼英総選挙 野党・労働党が単独過半数
去り際は美しかったスナク氏の失策を、どこまで変革できるか大いに期待

イギリス議会下院総選挙の投開票が4日行われ、最大野党、
労働党が単独過半数となる412議席を獲得しました。

一方、与党保守党は121議席にとどまり、
スナク氏は党首を辞任する考えを表明、
勝利した労働党のキア・スターマー党首は5日、新たな首相に就任し、
変革に向けた仕事を直ちに始めると表明しました。

まず一つ言えるのは、
スナク氏の解散はインフレが落ち着いてきたタイミングで行われましたが、
これは全くの見当違いだったということです。

徴兵をほのめかしたり、不法移民をルワンダに送り返すために
お金を払って受け入れをと言っていましたが、
そもそもアフリカからの移民は少ないので、
政策のポイントはかなりずれていました。

イギリスでも日本と同様、首相が解散を決定することができますので、
最終的には決着を付けようと内閣総辞職、総選挙に踏み切ったわけですが、
スナク氏は惨敗しました。

英語で「ランドスライド」と呼ばれる地滑り的な労働党の勝利で、
労働党は211から412へと議席を大幅に増やし、
一方、保守党は251議席から121議席となりました。

これは驚くべき結果です。

また労働党412、自由民主党は71、スコットランド国民党は激減しました。

勝利した労働党のキア・スターマー氏は根っからの労働党の人で、
貧困層が政府や権威に対して訴えるような訴訟で活躍した真面目な弁護士です。

スターマー氏は普通の中の下くらいの家庭に育ち、
イギリスによくあるデュプレックスという、
建物を半分に割って左右対称とした家に住んでいましたが、
最終的にはオックスフォード大学の大学院まで進学した優秀な人物です。

労働党がかつて労働者党という名の時代に三つに分裂していましたが、
今から124年前の1900年、キア・ハーディ氏が一つにまとめて、
現在の労働党の基礎を築きました。

彼のお父さんも労働党の熱心な支持者であったことから、
スターター氏のファーストネームは「キア」となりました。

スターター氏は「キア」という名が嫌いだったそうで、
デービッドやアンドリューといった普通の名前にしてほしかったと
話していますが、今では労働党を背負って立つ存在として評判が高く、
質実剛健な人物で、サイコロを並べて立てるように着実に
物事を進めるタイプだと評価されています。

一方、スナク氏は、ダウニング街10番地に登場し、
国民からこれほど嫌われているとは知らなかったと短く謝罪して妻と共に去りました。

スナク氏が潔く辞任した理由は明確で、それは彼が非常に裕福だからです。

スナク氏の妻、アクシャタ・ムルティ氏はインド最大のIT企業、
インフォシスの創業者ナラヤナ・ムルティ氏の長女です。

私もかつてインフォシスとは合弁していましたのでよく分かるのですが、
この会社は非常に大きく成長しています。

彼女は0.91%の株式を持っていますが、
その価値は約1100億円と言われており、
配当だけでもイギリス王室より多いとされています。

またスナク氏も裕福な家庭の出身で、
二人はスタンフォード大学で出会いました。

スナク氏は非常にすっきりした顔で、これからは恨まれたりすることなく、
裕福な生活を楽しむことができると感じていたことでしょう。

彼があいさつしている背後に立っていた妻のアクシャタ氏は、
これからはスターマーさん、よろしくねという心境だったのでしょうか。

アクシャタ・ムルティさん、おめでとうございます。

そして非常に正しく、いい言葉だと私は思いましたが、
スナク氏は「イギリスにとってスターマー氏は非常に信頼できる人だ、
彼の成功を祈ります」と称賛し、期待する言葉を述べました。

かつて選挙に敗れて去るサッチャー氏もジョークとして
同様の言葉を残しましたが、今回スナク氏は、
このようにきれいな別れ方をして去っていきました。

2024年英下院選における英労働党の公約を詳しく見ていきましょう。

最も重要なのはNHSです。

イギリスは国民皆保険を誇る国ですが、NHSは現在、機能不全に陥っています。

診察を受けるまでに6時間や7時間待つことは日常茶飯事であり、
手術となっても4、5カ月先というのが普通です。

スターマー氏の奥さんは看護師出身であり、
現在はNHSで看護事務を務めています。

彼女からのアドバイスもあるのでしょうが、
毎週4万件の予約診療を増やす必要があると主張しています。

さらに、労働党は教師を6500人増やし、
新たな労働者向け住宅を150万戸建設する計画を打ち出しています。

またスナク氏の大失敗の一例として、ルワンダに資金を提供し、
難民の全てを引き取ってもらうよう求めたことが挙げられます。

実際にはアフリカからではなく、現在は中近東地域からが主であり、
スナク氏は的外れなことをやっていたわけです。

さらに金を払うから受け入れろという姿勢は、
無責任極まりないと言わざるを得ません。

私は、特にスナク氏の徴兵制度導入の方針が大きな問題であったと
考えていますが、国のために仕事をするということは重要であり、
その方法には慎重さが求められます。

私は保守党に若干の期待を抱いていますが、
現在のイギリスが苦しんでいる最大の理由は、
実はブレグジットだと考えています。

ブレグジットにより、東ヨーロッパなどから医師や看護師、
お手伝いさんなどがぱったりと来なくなりました。

また労働党は、物価高騰の原因がポルトガルやスペインなど、
ヨーロッパからの安い野菜などが入ってこないことにあると考えているようです。

ブレグジットについてはヨーロッパと再度協議すると述べていますが、
再度EUに加盟するということは行わないと明言しています。

私がブレグジットを自発的に再考し、
新たな協定を模索する必要があると思います。

 

 

▼英スターマー政権 新政権の閣僚人事発表
イングランド・アローンへの恐れを回避できるか

今回の閣僚人事を見て、私は画期的だと感じています。

まず25人の閣僚の中で11人が女性であり、
特にリーブス氏が財務大臣に就任したことは注目に値します。

女性の財務大臣誕生は700年ぶりで、
イギリスという古い国で財務大臣を女性が務めるのは
これまでほとんど例がありませんでした。

このような歴史的な選任が行われることや、
スナク氏によるルワンダへの難民移送をやめると述べたことを見て、
非常に興味深いと私は思います。

またシン・フェイン党が北アイルランドで最大勢力になったことは、
非常に重要な出来事です。

今後、ユナイテッド・キングダムが崩れる非常に重要なきっかけとなるかもしれません。

シン・フェイン党はもともとカトリック系で、
アイルランドとの統一を目指しており、長い間血の争いを続けてきました。

トニー・ブレア首相の時代に和解し、安定が確保されましたが、
その後、カトリック教徒の出生率が高まり、
逆にイギリス国教徒の出生率は低くなるといったバランスの傾きにより、
シン・フェイン党が今回、最大党になりました。

これにより、アイルランドと統合したい、イギリス連邦から抜け出たい、
ユナイテッド・キングダムから離脱したいという動きが、
まだ2、3日しかたっていないにもかかわらず既に加速しています。

スターマー氏にとって、
この動きはイギリスにとって大きな損失を招きかねません。

ユナイテッド・キングダム、つまり連合王国の一部が崩れることになり、
既に独立を模索しているスコットランドやウェールズなど、
他の地域が分離する可能性が高まります。

これによってイギリスはばらばらになり、
ブレグジット後のシナリオとして私が以前に述べた
「イングランド・アローン」が現実のものとなるかもしれません。

今回の北アイルランドの選挙結果により、
この方向に進む具体的な動きが既に見られることから、
スターマー氏にとっては、これがやはり大きなマイナスになるでしょう。

 

 

▼フランス総選挙 決選投票で極右「国民連合」が第1党の勢い
イメージ先行のにわか党首、化けの皮がはがれるのはいつか

フランス総選挙、決選投票の投開票が7日、始まりました。

極右の流れをくむ国民連合が第1党をうかがう勢いで、
続いて左派連合の新人民戦線、
マクロン大統領の与党連合は第3の勢力となる見通しで、
日本時間の8日、昼にかけて体勢が判明する見通しですが、
いずれの党も過半数に届かない可能性が強まっています。

7月7日の日曜3時から、この決選投票が始まっています。

マクロン氏は考えが甘かったようで、解散をしても何の足しにもならず、
自分がここまで嫌われているということに気付かなかったのでしょう。

結果として、極右政党とされる国民連合が圧倒的な第1党になりました。

1人が50%を取っていない選挙区では1位と2位での決選投票が行われましたが、
300議席以上がこれに該当します。

このような選挙区では、左派連合を取るか、
マクロン氏の与党連合が取るかといった候補の一元化を行うため、
マクロン氏と左派のメランションが話し合い、
そしてこの動きはうまくいったように見えました。

しかし今回の投票結果では国民連合が第1党になることは避けられず、
第2党は左派、現大統領マクロン氏の共和党前進が3位という見通しです。

第1党である国民連合党首のバルデラ氏は主義主張やイデオロギーが全くない、
党首としての訓練を受けた、にわかづくりの党首です。

ル・ペン氏の姉も立候補していますが、バルデラ氏によって、
ル・ペン氏の父親から受け継がれたとんでもなく
強い右翼のイメージが払拭されました。

これまでのフランス政界内はミッテラン氏などひどい人物ばかりでしたが、
バルデラ氏はハンサムで、政界には長らく見られなかったタイプの人物です。

バルデラ氏は自分の主張はありませんが、
演技指導もあって何となくよい感じを与えるのは、
ハンサムな人は得だという典型的な例だといえるでしょう。

岸田氏も参考にしたらいいんじゃないかと思いますね(笑)

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