緊急事態宣言/国内医療機関 ~「ボイス」が重要なのではなくて、「行動」が重要
・緊急事態宣言 1/8から1都3県に緊急事態宣言発令
・国内医療機関 コロナ病床「1波」より減少
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▼「ワンボイス」のスローガンを掲げ、責任転嫁を図る知事
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菅首相は7日、
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、
東京、千葉、埼玉、神奈川に
緊急事態宣言を発令しました。
期間は8日から来月7日まで。
これを受けて、1都3県の知事は
午後8時以降の住民の外出と
飲食店の営業自粛や通勤の7割削減などを
要請しました。
この発表では、
「時間制限や人数制限をすれば問題なし」
と感じてしまう点に問題があると思います。
たとえば、午後8時までの営業と制限をつけても、
「では午後8時までは何をやってもいいのか?」
という議論になります。
表面的に「何時までならOK」としても、
「OK」の部分だけが1人歩きしてしまい、
本質的な解決策にはなりません。
表面的な時間制限や人数制限をするのではなく、
本質的に何をしてはいけないのか、
何を守るべきなのか、
という点を明確にするべきです。
そうすれば、
「○○を守れるなら、午後9時まで営業しても問題ない」
というような方針も柔軟に検討できます。
今回の緊急事態宣言の発令にあたっては、
1都3県の知事からの要請が強く影響しました。
よくよく各知事のバックボーンを見てみると、
ニュースキャスターや俳優など
テレビに出演していた「喋りのプロ」です。
西村経済再生担当相が押し切られてしまうのも、
しょうがないところでしょう。
ただ、「喋りのプロ」として
上手に主張を通したかもしれませんが、
私に言わせれば、
各知事は自分のすべきことを何もしていません。
自分たちがやれるべきことが
山のようにあるのに、
それらを何1つ実行せずに、
「ワンボイス」というスローガンだけ掲げて、
国に緊急事態宣言を要請しただけです。
これで知事としての役割を
果たしていると言えるのでしょうか。
「ボイス」が重要なのではなくて、
「行動」が重要だと私は思います。
昨年のほうが、良くも悪くも各知事は
自主的に行動していました。
今回は、東京アラートを発動することもなく、
レインボーブリッジや通天閣の色を変えるといった
パフォーマンスすら一切やらなくなりました。
一言で言えば、「責任を取りたくない」という
気持ちの表れだと私は感じます。
自分たちが何かを決定すれば、
そこに責任が生じます。
倒産する会社も出てくるでしょうし、
失業する人も出てきます。
そういった責任を、
「ワンボイス」というスローガンのもと、
国になすりつけているようにしか
私には見えません。
そして、
政府・国もまともに対応できているとは
思えません。
政府は昨年、
1月18日召集予定の通常国会に提出する
新型コロナウイルス対策の特別措置法改正案について、
3月末と見込まれる2021年度予算案成立を待たず、
他の法案に先行して処理することで
合意しています。
このような緊急事態なのですから、
私は今こそ緊急に国会を開いて
議論するべきだと思います。
それが正常な手続きであり、正しい順序です。
こうした点を批判・指摘できない野党も、
役割を果たしているとは言えないでしょう。
また、私は今回の緊急事態宣言発令の背景に、
「GoToトラベルキャンペーンの再開を延期したい」
という菅首相の思惑があったと見ています。
全国で一時停止中のGoToトラベルは
1月12日から再開予定でしたが、
国民からの風当たりは強く、
このまま再開をすれば
菅首相は大きな批判を浴びることになったと思います。
一方で、GoToトラベルの再開を延期する場合、
菅首相は政権の後ろ盾にもなっている
自民党の二階幹事長を説得する必要がありました。
全国旅行業協会の会長を務める二階幹事長が、
「延期」を簡単に承諾してくれるとは思えません。
そこで、今回の緊急事態宣言を
「利用」したのだと私は思います。
緊急事態宣言を発出すれば、
二階幹事長としても
「GoToトラベルを再開しろ」
とは言いにくいからです。
これが、菅首相が、
知事からの緊急事態宣言の要請を
素直に受け入れた理由だと
私は見ています。
このような思惑があって発令された
緊急事態宣言ですが、
昨年春の緊急事態宣言とは違い、
明確に「ステージ4」という条件が定められていて、
感染者数など具体的な数字で定義がされています。
ゆえに、緊急事態宣言の終了時期になっても、
各種数字を見てステージ4から
ステージ3に戻っていなければ、
延長することになるはずです。
定義が明確になっているのは良いと思います。
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▼病院を仕分けて体制を整えること、それが国や知事がやるべき仕事の1つ
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日経新聞は6日、
「コロナ病床『1波』より減少」
と題する記事を掲載しました。
新型コロナの感染拡大が続く中、
国内で確保を見込む病床の数は、
昨年春の第1波より少ない水準になっています。
日本は欧米に比べて感染者数が少なく、
国全体の病床の数が多いにもかかわらず、
一部の医療現場の逼迫を防げておらず、
医療資源の集約など対策が急務としています。
第1波、第2波で終わりという前提で動いていて、
それよりも大きな第3波が来ることなど
予想していなかったというところでしょう。
それが正月休みというタイミングと重なって
厄介な状況になってしまいました。
あらためて日本の病床利用率や総病床数などを見ると、
日本は圧倒的に世界一の病床数があるにも関わらず、
それらが新型コロナ感染者に対して
機能的に使われていない、
ということがわかります。
そして、全体で見れば病床の8割が空いているのに、
緊急事態宣言をするという
「おかしな事態」を招いています。
これこそ、各知事が率先して取り組むべき問題です。
運営形態別の患者受け入れ可能病院数をみると、
民間病院の受け入れ割合が低くなっています。
新型コロナの患者を受け入れると、
医師の負担が大きくなり、
重症患者のための看護師の数が足りない、
など様々な問題が生じます。
また、経営的に厳しくなるといった
理由もあるでしょう。
こうした状況を解決するために、
各知事が「行動」を起こすべきだと思います。
多くの病院が
新型コロナの患者を受け入れられるように、
自らの責任で決定を下し、
予算をつけて必要な人材を手配して、
きちんとした体制を整えていくことが重要です。
しかし、各知事は何1つとして、取り組んでいません。
また、国・厚労省も
大病院と民間病院の区分けをするなど、
有効な手を打てていません。
それゆえ、世界一の病床数がある国なのに、
保健所が病院に受け入れをお願いしても、
患者がたらい回しにあうという
非常に効率が悪い状況が続いています。
唯一この状況の光明を挙げると、
緊急事態宣言を発令しながらも、
全体的には、依然日本の病院には
新型コロナ以外の患者を受け入れる余裕があることです。
病床が逼迫していて、
他の病気の患者の受け入れに
影響が出ている国も多くありますから、
余裕があるのは良いことだと思います。