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大前研一ニュースの視点

日中関係/対中ODA~新たな時代の3原則よりも、対中ODA終了が持つ重要性

2019/01/28

・日中関係 7年ぶりに中国を公式訪問
・対中ODA 日本のODA積極報道を指導

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▼新たな時代の3原則よりも、対中ODA終了が持つ重要性
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安倍首相は先月25日、日本の総理大臣として
7年ぶりに中国を公式訪問しました。

総理はまず李克強首相と対談し、東南アジアなど
第三国でのインフラ整備を通じた日中協力を強化し、
関係の改善を進める考えで一致。

また習近平国家主席とは約1時間20分会談し、
新たな時代の日中関係について
「競争から協調へ」などの3原則を確認しました。

最近中国における日本企業の活動も
円滑になってきたとも聞きます。

合わせて今回の安倍首相への「歓待」を見ると、
中国の日本に対する態度が全体的に軟化しているのでは?
と感じる人も多いでしょうが、
これが今後も続くのかどうかはわかりません。

中国はその時々・状況に応じて、政府がどのような態度で
受け入れるかという方針を決めて、
全員が忖度するという形を取ります。

もしかすると、何かまた日中間で問題が起これば
中国企業の態度も一変し、中国国民が日本企業に
投石するようなこともあり得ると私は思います。

とは言え、現時点で言えば
今回の安倍首相の訪中には意味がありました。

第三国でのインフラ開発協力に対する認識においては、
中国側の「日本が一帯一路構想に協力してくれる」
というものに対して、日本はそれだけは同意できない
と考えています。

中国との間ですから、こうした多少のズレは出てきますが、
それでも今回様々な取り決めができたことは評価して良いでしょう。

その中で安倍首相は新たな時代の3原則
(「競争から協調へ」
「お互いパートナーとして脅威にならない」
「自由で公正な貿易体制の発展」)を強調していましたが、
私がさらに重要だと感じたのは
「対中ODAの終了」というテーマです。

今回の首脳会談において、中国に対する
政府開発援助(ODA)を日中両政府は
2018年度の新規案件を最後に終了することになりました。

円借款供与額が上位の国を見ると、
トップにはインド、2位にインドネシア。

かつてトップだった中国は現在3位になっています。

さすがにこれだけ経済発展を遂げた中国に、
これ以上ODAを継続するのはおかしい
ということで「終了」することが決定しました。

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▼中国ODAの裏にあった歴史的な因縁と自民党内の利権問題
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日本によるODAの終了を受けて、
中国政府は共産党・政府系メディアに対し、
中国の経済発展に対する日本の政府開発援助(ODA)の貢献を
積極的に報じるよう指導したことがわかりました。

これは歴史的なことで、これまで中国は日本のODAに対して
感謝を示したことは一度もありません。

例えば、ベトナムであればODAで橋が完成すれば、
必ず「日本のODAで作られた橋」だと報道し、
日本からも誰かお祝いに駆けつけます。

しかし中国の場合には、「日本のODA」という発表はなく、
まるで中国共産党が作ったもののように報道してきました。

このような中国側の態度には理由があります。

中国は日本のODAを戦争に対する
「償い」として受け止めてきたため、
「当然」の権利だと認識してきたから、
日本に対する感謝を示そうとはしなかったのです。

田中角栄氏が日中関係を正常化する交渉を進める中で、
中国側から戦争に対する償いを求められました。

本来この要望そのものがおかしいものです。

というのは、中国共産党は戦争時の当事者ではなく、
当事者であった蒋介石は日本の償いは
不要という意見だったからです。

それを承知の上で、当時の田中角栄氏と周恩来氏などが
一計を案じて、ODAという形で中国を支援することで、
中国側の要望に対応することにしました。

中国からすれば、償いのために資金援助をするのは
当然だと思っていますから感謝するわけがありません。

また、このODAは自民党・田中派の利権としても活用され、
ODAが行われると、自民党・田中派に資金が流れるような
仕掛けがあったとも言われています。

このような事実を多くの日本人は知らないと思います。

こうした歴史的な因縁や自民党内の
利権に絡むドロドロしたものなど、
国民には表立って知らされない事実があり、
それがずっと継続されてきていました。

今回のODA終了によって、このようなものに
終止符が打たれるのは非常に良いことですし、
非常に意味があることだと私は感じています。

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