人口動態統計/成長戦略/骨太の方針 ~出生率改善を本気で目指すなら、フランスの制度を研究せよ
2019/01/29
・人口動態統計 2016年の出生数97万6979人
・成長戦略 即効策なき成長未来図
・骨太の方針 「骨太の方針」素案を公表
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▼出生率改善を本気で目指すなら、フランスの制度を研究せよ
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厚生労働省が2日発表した人口動態統計によると、
2016年に生まれた子どもの数は97万6979人で、
1899年に統計をとり始めてから初めて100万人を割り込みました。
1人の女性が生涯に産む子どもの数は1.44と前年を
0.01ポイント下回り、マイナスは2年ぶりとなりました。
出産適齢期の女性の減少が少子化に拍車をかけているとしています。
1970年代以降、ずっとこの傾向は続いており、
今や出生数よりも死亡数が上回る状態になっていて、
日本にとっては致命的な問題です。
これは構造的な問題ですから、今のままでは反転しないでしょう。
この状況を打開するためには、スウェーデンやフランスのように
「戸籍」という概念をなくすことが重要です。
すなわち、正式に結婚していなくても生まれた子供を認める、というものです。
実際、婚姻件数も減少していますから、
結婚に期待するべきではありません。
また年齢別の出生数を見ると、一番多いのは「30~34歳」、
そして「25~29歳」「35~39歳」と続きます。
昔は20代後半が最も多かったのですが、
どんどん高齢出産の傾向が強くなってきています。
高齢出産になると、2人目、3人目が難しくなります。
この状況を考えても、戸籍をなくし、自然婚を認めて、
早い段階から出産しやすい環境を整える必要があると思います。
フランスでは、子ども手当が充実しています。
子どもを育てる過程で、金銭的に言えば2000万円ほどの
手当が受けられることもあります。
日本もフランスの制度を研究するべきです。
今の状況は、小手先の政策ではどうにもなりません。
根本的な制度、環境を見直して、
構造変化をもたらさなければ解決しないでしょう。
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▼具体案なし、実現性ほぼゼロ。成長戦略も骨太の方針もあいかわらず
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日経新聞は先月31日、「即効策なき成長未来図」と題する記事を掲載しました。
政府の未来投資会議で、様々な業種で企業からの申し出に応じて
規制を一時凍結する新たな仕組みを提唱されました。
特定の地域で展開する国家戦略特区に対し、
「プロジェクトごとの特区」といえるもので、
斬新なアイデアや技術をいちはやく取り込み、
新しい市場の創出につなげる狙いです。
しかし一方の労働市場や医療・介護の対策については、
目ぼしい具体策はなく、聞こえの良い未来像だけでは
絵に描いた餅になると指摘しています。
トラックの後続無人での隊列走行商業化など、
いくつか具体的で実現したほうが良いものも含まれていますが、
ほとんどはまさに「絵に描いた餅」そのものです。
せめて、トラックの後続無人での隊列走行などは
真剣に実現してほしいところです。
すでに外国では実施しているところがあるので、研究するべきでしょう。
また、成長戦略と同様に相変わらず何ら具体性もないのが、「骨太の方針」です。
政府は2日、経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の素案を公表しました。
人材への投資による生産性向上を柱とし、
幼児教育の早期無償化や待機児童解消を目指すことを明記。
また財政の健全化については、国と地方を合わせた基礎的財政収支を
2020年度までに黒字化する目標を堅持するとともに、
GDPに対する債務残高の割合を安定的に引き下げることを目指す、としています。
竹中平蔵氏以来、「骨太」という言葉がよく使われていますが、
私に言わせれば、中身はずっと薄っぺらです。
「債務残高をGDPに対して引き下げる」と言いますが、
具体的にどのような方法をとるのか?全く不明なままです。
「教育の無償化」も取り上げられていますが、
この財源はどこから持ってくるつもりなのでしょうか?
もしその財源があるなら、なぜ今までやらなかったのか?全く理解できません。
安倍首相は「最低賃金を年率3%引き上げる」と躍起になっていますが、
これは同時に「国外に脱出する企業が増える」という事実を
理解しているのでしょうか?おそらく、全くわかっていないと思います。
後発薬(ジェネリック)を2020年9月までに使用割合を80%にするなど、
ごく一部実現可能で有効なものがありますが、
ほとんどは具体案がない「希望」に過ぎません。
実現方法が全く示されていないものばかりです。
七夕の短冊ならまだしも、このようなレベルのものが、
政府の政策案として発表されるのは情けない限りです。