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大前研一ニュースの視点

フランス大統領選・ルノー・日産 ~史上最年少大統領のマクロン氏の前途は多難。ルペン氏の敗因と国民戦線の今後は?

2019/01/29

・フランス大統領選 エマニュエル・マクロン氏が勝利
・ルノー・日産 マクロン新大統領に身構えるゴーン氏

▼史上最年少大統領のマクロン氏の前途は多難。ルペン氏の敗因と国民戦線の今後は?

フランス大統領選の決選投票が7日行われ、
中道系独立候補エマニュエル・マクロンが勝利しました。

得票率は66.1%で、ルペン氏を大きく上回る過去3番目の大差となりましたが、
投票率は74.4%と1969年以来の低水準で、投票を棄権、
もしくは無効票を投じた有権者も全体の3分の1にのぼったということです。

マクロン氏は歴史上最年少のフランス大統領になりました。
マクロン氏に次ぐのは、ナポレオン三世ということですから、
150年以上前の話です。

当初は有力候補ではありませんでしたが、二大政党が共倒れして、
国民戦線とマクロン氏個人の戦いになったことが幸いした結果だと言えるでしょう。

総選挙に向けて候補者を擁立するにあたり、
マクロン氏は無所属だったため、新たに「共和前進党」を創設しました。

定数577議席の小選挙区制に対して、
出馬する428人の公認候補を発表しました。

フィールズ賞を受賞した数学者など、ほとんどが政治素人で、
その顔ぶれは半数が男性、半数が女性とのことです。

さて、この陣容でどこまで票が伸ばせるのか?というのが見ものですが、
フランス国内ではすでに「白けている」状態になっています。

ルペン氏には投票したくなかったという消極派も多く、
棄権・無効票が多かったのも事実です。

想像以上にマクロン氏の実態は知られておらず、
支持者が少ないのでは?と懸念も広がります。

個人的には、ドイツとの関係最強化を打ち出しているのは嬉しく感じます。

ドイツ、フランスがガッチリと手を組んでいれば欧州は安定します。

一方、フランス国内の経済の立て直しは大変でしょう。

フランスは官僚が強い国であり、自由主義経済とは程遠い状況です。

オランド政権は経済的には停滞の5年間と言われていますが、
マクロン氏にこの経済の停滞を乗り越えるビジネス経験があるのかというと、
疑問の余地が残ります。率直に言って、前途多難であることは間違いないでしょう。

マクロン氏に敗れたルペン氏は失望感に打ちのめされており、
次の総選挙に出馬しないのではないかとも言われています。

もしルペン氏が出馬しなければ、
彼女を次ぐ人材は今のところ見当たりません。

大統領選における20年間の国民戦線への投票率の推移を見ると、
一時落ち込んだ時期もありましたが、基本的には投票率をのばしてきました。

ここでルペン氏が退いてしまうと、これまでの苦労が水の泡になると言えます。

ルペン氏の敗因はテレビ討論だったと私は感じています。

ルペン氏は、あまりにも経済に対して常識がないことを露呈してしまいました。

英国がすでにEUを離脱「した」と過去形で語ってしまうなど、
最低限のことさえ理解していないと思われても仕方ありません。

その結果、急激に人気が失墜して敗北しました。

▼フランス政府のルノーへの政治介入は、日産にとっても重大事項

今、マクロン氏がフランス新大統領に就任して、
政府介入を恐れ身構えているのが、ルノーのカルロス・ゴーン会長でしょう。

マクロン氏は、オランド政権で経済産業デジタル相を務めていたとき、
ルノーへの政治介入を測ったことがあります。

フランス政府はルノーの最大株主です。

マクロン氏は、株式を長期保有する株主の議決権を2倍にできる
「フロランジュ法」を盾に取り、ルノーへの経営関与を強めようとしました。

このときは日産にとって最悪のケースにならずに落ち着きましたが、
もしまた再燃したら今度はどうなるのかわかりません。

場合によっては、ゴーン氏を解雇することすらできるでしょう。

日産にとっては、フランス政府がルノーをどう扱うのか、
というのは非常に重要な問題です。

今後のフランス政府の動きには注目しておく必要があるでしょう。

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