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大前研一ニュースの視点

米トランプ大統領・ドル相場 ~トランプ大統領の頭にある経済理解は、30数年前のもの

2019/01/29

  • 米トランプ大統領 トランプ氏が第45代米大統領就任
  • ドル相場 「我々の通貨は強すぎる」

トランプ大統領の頭にある経済理解は、30数年前のもの

ドナルド・トランプ氏が20日、第45代米大統領に就任しました。

トランプ大統領は就任演説で、あらためて「米国第一主義」を掲げるとともに、
「私の今日の宣誓は米国民全員のために奉仕する誓い」だと述べ、
国民に結束を呼びかけました。

しかし、ワシントンではトランプ氏の就任に対する抗議デモが行われ、
警察との衝突が起きるなど社会の分断が浮き彫りになっています。

就任演説を聞いた率直な感想を言えば、「最悪」の一言に尽きます。

トランプ大統領の頭の中にある経済理解は、
30数年前に米国人が日本人に対して持っていた発想です。

第2次産業に限られた話であり、時代錯誤も甚だしいと思います。

米国における第2次産業は、米国企業によって淘汰されました。

その後、レーガン革命によって、通信、金融、
ICT等の分野が台頭し、大いに繁栄しました。

現在、米国の約80%は第3次産業に従事しています。

第2次産業で敗北した人たちが、
「雇用を取り戻す」というトランプ大統領のメッセージを
受けて支持したのですが、現実的にはまず不可能でしょう。

膨大な数の米国企業が世界に出ていきました。

それこそトランプ大統領自身が個別に声をかければ、
数社は戻ってくるかも知れませんが一部分にすぎないでしょう。

そもそもウォルマートやコストコなどを見ても、
米国の外で一番条件が良い場所で作って、
それを米国に持って帰ってきていること自体、
お客さん(米国民)にとっては大きなメリットのはずです。

このような事実を無視して、
「America First」だけを叫ぶトランプ大統領を見ていると、
日米貿易戦争当時の黄禍論を思い出します。

米国は第3次産業の発展で「強くなりすぎている」というのが事実であり、
トランプ大統領の認識は完全に間違っていると私は思います。

「世界を見ず、米国だけ強く」そんなことは成り立たない

またトランプ大統領の演説の中で、
「アメリカ」というキーワードだけが強調され
「世界」という言葉が出てこなかったのも非常に残念でした。

端的に言えば、世界に対しては「全てを反故にする」という姿勢を見せています。

NAFTA、WTO関連も白紙にするという話も聞こえてきますし、
「なぜ欧州と徒党を組むのか?」と述べ、NATOすら見直すと言われています。

トランプ大統領は「米国のことしか考えない」と発言していますが、
それでは今の世界は成り立ちません。

ISを徹底的に叩くと言っていますが、
現実的には無理でしょうし、ISを追い込めば追い込むほど、
結果として米国の都市がより不安定になることは容易に想像できます。

トランプ大統領の世界に対する理解は、「不動産屋」の域を出ていません。

ICTやサービス業に対する理解が乏しいから、
第3次産業の発展のおかげで米国は世界に
迷惑なくらい強くなってしまったこともわかっていないのでしょう。

トランプ大統領の通貨に対する理解もおかしなものです。

「我々の通貨(ドル)は強すぎる」と述べたそうですが、
これも「(輸出を前提にした)製造業で競争力を持つには、通貨が弱い方がいい」
という前提であり、昔の第2次産業のことしか理解していない発言です。

今の米国は日用品の大半を中国などの輸入に頼っているので、
米ドルが弱くなれば物価は上がります。

また、中国を為替管理国と批判しながら、
自らが先頭に立って為替管理の発言をしています。

もはや支離滅裂だと言わざるを得ません。

米国内の大統領就任時の好感度調査によると、
トランプ大統領は「好感を持てない」割合が過半数になっています。

これまでの大統領の中でも、極めて悪い結果です。

トランプ大統領を選んだ人たちの中にも、
「ここまでひどいとは思わなかった」と気づいた人もいると思います。

最終的にヒラリー氏よりも得票数は少なかったのに、
大統領に選ばれてしまったのは、今の制度の問題点を浮き彫りにしたと言えるでしょう。

今後、トランプ大統領によって世界は大迷惑を被ることになると思いますが、
しばらくは放っておくしかないと思います。

今のトランプ大統領を説得できる人がいるとも思えません。

今のままの経済政策を実行し続ければ、米国は大変なことになるでしょう。

内閣の中にはまともな人もいますし、
いずれトランプ大統領自身が立ち行かない状態に陥ると私は見ています。

トランプ大統領の就任演説を見て、
「テレビタレントとして良いのかも知れないが、
米国、そして世界のリーダーとしての器ではない」と強く感じました。

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