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大前研一ニュースの視点

米トランプ次期大統領・日米関係・TPP・米欧関係 ~米軍の駐留経費を100%負担する方針で交渉を進めるべき

2019/01/29

  • 米トランプ次期大統領 円滑な政権移行で一致
  • 日米関係 「トランプ・ショック」が日本の外交・安全保障に波紋
  • TPP 「年内議会提出は確実にない」
  • 米欧関係 トランプ氏勝利の影響を協議

米軍の駐留経費を100%負担する方針で交渉を進めるべき

米国のトランプ次期大統領は10日、ホワイトハウスでオバマ大統領と会談し、
円滑に政権移行を進めることで一致。

オバマ氏は外交、内政の重要事項を話し合ったと明らかにしたうえで
「これから2カ月間の最優先事項は政権移行を円滑に進めることだ」と述べたとのこと。

トランプ氏の動向を見ていると、今のところ慎重な姿勢を見せています。

しかしトランプ氏が1人で動き出したら、元の木阿弥になる可能性も十分あります。

どのような政権にするかが重要です。

今のところ政権のメンバーとして有力な人たちというと、
ジュリアーニ元ニューヨーク市長、クリス・クリスティ・
ニュージャージー州知事など、率直に言って嫌われ者連合といったところです。

旧聞に属する人たちが周りを取り囲んでいて、
その人達が重要閣僚になると言われています。

日本への影響として、トランプ氏の米大統領就任で、
日米関係に最も影響を与えそうなのが在日米軍の駐留経費問題だと報じられています。

トランプ氏は選挙戦で、米軍駐留経費を日本政府が
100%負担しない場合の米軍撤退も示唆していました。

慌てた日本政府は、在米大使館を中心にトランプ陣営と接触し、
説明を重ねてきたとのことですが、現在の両国間のガイドラインによると、
一方的に米国が「さようなら」というわけにはいかないのも事実です。

また米国にとっても、
実は「日本からさようなら」することは決して得ではない、と私は思います。

国別の駐留米軍兵士の数を見ると、
世界の中でも米軍兵士は日本に最も多く駐留していることがわかります。

日本に続いているのが、イラク、ヨルダンなどの中央軍管轄地域、
そしてドイツ、韓国、イタリアです。

経費負担の割合で見ると日本75%に対してドイツは40%ほどですから、
日本に米軍を駐留させるのは「得」なのです。

現在のグアム駐留数は約5600人。

これを4万人にするのは、米国にとっても非常に難しいと思います。

日本側から見ても、トランプ氏が言うように
「全額負担」することは決して損ではないと私は思います。

日本はすでに関連費用を含めて駐留経費を約7000億円支払っています。

米軍の駐留経費全額となっても、追加で約4000億円程度です。

私なら全額支払うと言うでしょう。

米軍に出ていってもらって、自衛隊で置き換えればいいという意見もありますが、
これはすぐに実現することは無理です。

日本の自衛隊は「専守防衛」の方針ですから、攻撃型の兵器を保有していません。

ですから、例えば中国と問題を起こした場合、
自ら攻撃することができないのです。

これでは外交上「なめられる」のは間違いないでしょう。

今から攻撃型の兵器を作れば?と言っても一朝一夕にはできません。

攻撃型兵器の代表格である空母は、4年~5年で開発できるものではありません。

中国でさえ、空母の開発にあたってはウクライナから調達したものがあった上で、
さらに5年~6年の時間を要しました。

トランプ・ショックと言われますが、
逆に言えばお金さえ払えばいいのですからチャンスだと思います。

日本の防衛費はGDPの1%で約5兆円。

そのうちの10分の1程度の4000億円を支払えばいいだけのことです。

米国にとっても軍事力削減にならずメリットがあることを伝え、
この交渉を成立させることがこれからの数ヶ月の重要課題の1つだと思います。

TPPが見送りになっても、日本にとって致命的ではない

米マコネル上院院内総務は9日
「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が年内に議会に提出されることは確実にない」
と述べました。

米大統領選でTPP脱退を掲げた共和党のトランプ氏が勝利したことを受けて、
オバマ政権が目指す年内の議会承認を見送る考えを表明しています。

日本の通商政策は再びゼロから構築する必要が出てきました。

とは言え、TPPがなくても去年・今年と同じ状態ですから、
それほど戦々恐々とする必要もないでしょう。

TPPは日本が攻め込まれることも多い部分があるのですが、
トランプ氏は完全に勘違いをしています。

特にサービス産業や知的産業では米国に対して、
相当の譲歩を求められていました。

トランプ氏の頭にあるのは工場のことで、
中国をメインで想定しているはずです。

今後、TPPの方針については修正が入るでしょうが、
取り敢えず延期されたというのは、日本にとっては、
ある意味、不幸中の幸いとも言えます。

悲観的なのは欧州です。

欧州連合(EU)は11日、通商担当相理事会で、
米大統領選でトランプ氏が勝利したことが米欧交渉に及ぼす影響を協議しています。

通商交渉を担うマルムストローム欧州委員は米欧が
交渉中の自由貿易協定(FTA)は「かなり長い間、冷凍庫の中に入るだろう」と述べ、
交渉再開に数年を要する可能性をにじませたとのことです。

メキシコに工場を持つ自動車メーカーは、日本よりもむしろ米国メーカー

日経新聞は11日、「トランプの壁、マツダに試練」と題する記事を掲載しました。

米大統領選で勝利したトランプ氏がちらつかせる北米自由貿易協定(NAFTA)からの脱退。

これが現実になればマツダが乾坤一擲の勝負で建設したメキシコ工場が、
北米開拓の要衝としての機能をそがれると紹介。

マツダの試練は多くの日本車大手にとって人ごとではないと報じています。

今、日本企業は米国よりもメキシコに工場を作るのが盛んですから、
確かにこれは大変な事態を招きます。

メキシコで作ったものが安い関税で入ってくれば、米国の消費者も助かるはずです。

自動車生産台数で、メキシコは世界7位。

メーカー別の新車生産台数を見ると、
1位の日産、GM、フィアット・クライスラー、フォルクスワーゲン、フォードと続きます。

日産は古くからメキシコに進出していますが、
その他の日本メーカーはメキシコ進出が遅れており、
むしろ米国メーカーが積極的にメキシコに進出しています。

米国自動車メーカーが団結して、トランプ氏に物申すべきだと私は思います。

確かに新しい工場を作ったばかりのマツダには痛手でしょうが、
トヨタ、ホンダ、日産など日本メーカーは米国内でも400万台の生産体制を
保有していますから、「この世の終わり」というほどではありません。

関税の割合にもよりますが、大変な事態ではあるものの、
それほど悲観的になりすぎる必要はないと思います。

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