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大前研一ニュースの視点

米税制改正/ロシアゲート/天然資源開発/ロシア情勢 ~米税制改正の影響は極めて大。2.5兆ドルが米国に戻る可能性

2019/01/29

・米税制改正 法人税率21%で大筋合意
・ロシアゲート 厄介なシナリオ
・天然資源開発 LNG初出荷で記念式典
・ロシア情勢 2018年大統領選への出馬表明

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▼米税制改正の影響は極めて大。2.5兆ドルが米国に戻る可能性
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与党共和党指導部は13日、上下両院の一本化へ向け
協議していた連邦法人税率について、
21%に引き下げる案で大筋合意しました。

両院とも20%に引き下げる案でそれぞれ可決していましたが、
実施時期を2018年で統一する一方、税収減を懸念する議員を配慮し、
減税幅を1%縮小したもので、週明け早々にも上下両院で採決する見通しです。

おそらく今年中にはトランプ大統領がサインをして成立する予定です。

共和党としてはこれでトランプ大統領の役割は終わりと考え、
後は決別してもいいという気持ちだと思いますが、
これは極めて重要な案件です。

連邦法人税率を21%に引き下げるということですが、
実際には各州税が加わるため、20%台後半の税率になります。

また個人所得税については、最高税率が39.6%→37%に引き下げられます。
こちらは、あまり効果を期待できないでしょう。

一方、大きな影響を期待できるのが、
海外子会社からの配当課税の廃止です。

これにより、企業は海外留保資金を米国に戻しやすくなります。

これは非常に影響力が大きく、うまくすれば、
海外に置いている2.5兆ドル規模の資金が米国に戻ってくる可能性があり、
米国は「お金でジャブジャブ」状態と言えるレベルになるでしょう。

この政策が実施されると、米国はクリントン政権の後期のように、
盆と正月が一緒に来たような状態になるかもしれません。

米国経済は株価も上がり、さらに海外からの資金も流入してくる可能性があり、
日本経済への影響も極めて大きいものになると私は見ています。

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▼トランプ大統領に弾劾を乗り切る能力はない
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ザ・エコノミストは13日、「ロシアゲート、厄介なシナリオ」
と題する記事を掲載しました。

大統領選当時のトランプ陣営幹部らが出版した回顧録からは、
陣営の混乱状況とことごとくルールを破る厚かましさが見て取れると指摘。

現在捜査を進めているモラー特別検察官が
コミー氏解任による司法妨害の罪をあげたとしても、
おそらくトランプ氏はニクソン氏のようには辞任せず、
議会もトランプ氏を追い落とすには分断されすぎているとしています。

私は少し異なる意見を持っています。共和党は完全に分裂しており、
トランプ大統領を支持するのはわずか10%程度です。

大統領の弾劾の可能性も大いにあると思います。

そして、もしトランプ大統領が弾劾される立場になったとき、
彼の言語能力ではその状況に耐えられないと見ています。

トランプ大統領の発言を見ていると、文章は短く、
バラバラでしかモノが言えない人だと感じます。

弾劾される立場になって厳しい問答に1時間も2時間も耐えられるとは思いません。

クリントン元大統領、ニクソン元大統領とも違います。

その意味でも、トランプ大統領が辞任する可能性は大いにあると思います。

ただ、トランプ大統領が辞任したとしても
トランプファミリーにとっては何も痛いところはないでしょう。

大統領を何年務め上げたかは関係なく、
元大統領という経験と肩書きがあれば十分でしょう。

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▼プーチン大統領とメドベージェフの役割と関係性
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ロシアのヤマル半島に設置したプラントで8日、
液化天然ガス(LNG)の生産が始まり
初出荷に合わせた記念式典が開かれました。

これは、ロシア天然ガス大手・ノバテクを中心に、
総額約3兆円を投じて進められるプロジェクトで
これによりロシアは従来のパイプラインによる輸出だけでなく、
北極海航路を利用したアジアや欧州向けの
LNG輸出を拡大したい考えとのことです。

このヤマル半島というのは、現地ネネツ語で
「ヤ(世界)マル(終わり)=最果て」の意味を持つ、
非常に気候条件が厳しい地域です。

1年のうち約8ヶ月は冬で、氷点下60度まで気温が下がります。

一方、夏にあると30度まで気温が上がり永久凍土が溶け、
蚊や虻が大量発生するという地域です。

天然ガスの埋蔵量は世界有数の地域として有名です。

ロシアはこのヤマル半島に港をつくる計画を立てています。

一般的に天然ガスはパイプライン経由で輸送されますが、
今回の計画は、天然ガスを液化してLNG船で輸送するというものです。

液化した天然ガスをのせたLNG船で、
北極海を通じて日本や中国に運ぶという壮大な計画です。

この日、プーチン大統領は3箇所の異なる場所に顔を出して、
挨拶・演説をしていました。

ヤマル半島という寒い場所にも赴いて、達者な人だと感じました。

そのプーチン大統領は、2018年3月に予定される
次期大統領選挙への出馬を表明しました。

自動車企業の従業員らとの会合で、
参加者からの立候補の要請に応える形で明らかにしたもので、
再選され任期満了の24年まで務めれば
約四半世紀にわたってトップに君臨することになります。

プーチン大統領は2000年に大統領に就任し、
一度首相を経て、また大統領に就任しました。

その間に大統領の任期を6年に延ばし、
6年×2期=12年できる体制を確立しています。

プーチン大統領に対するロシア国内の支持率は、約80%です。

ロシア国民の政府に対する不満は高いのですが、
その不満はメドベージェフ首相に向けられていて、
プーチン大統領には影響していません。

政府の代表はメドベージェフ首相であり、
政府に対する不満は首相に向けられるようになっているのです。

この構図は中国も全く同じです。

習近平は総書記であり、中国政府に対する不満は
国務院総理である李克強に向けられます。

私は以前、「李克強がメドベージェフ化した」
と説明したことがありますが、まさにこの構図のことを指しています。

それにしても、メドベージェフ首相をおとしめて、
プーチン大統領は安全な立場で信任を得ているという、
このイカサマのロジックにロシア国民は気づいていないのでしょうか?
おそらくロシア国民は、みんな気づいていると私は思います。

それでも、今のロシアから強力なリーダーシップを発揮する
プーチン大統領がいなくなってしまうと、
米国や欧州からも馬鹿にされてしまうので、
どうしようもないと感じているのだと思います。

すなわち、プーチン大統領は「必要悪」であり、
強いロシアを作るためには必要な人物だと認められているということです。

日本にとってみれば、プーチン大統領の再任はチャンスです。

プーチン大統領は親日派です。

一方のメドベージェフ首相は日本を好きではありません。

プーチン大統領が再任されたとして、任期は6年です。

日本としては、その6年間でロシアとの問題を解決しないと、
さらに厄介な状況になってしまうでしょう。

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