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大前研一ニュースの視点

日本郵政/世界クルーズ船大手/世界航空大手/国内旅行業界 ~事業の多角化を進めた鉄道会社がとるべき道とは?

・日本郵政 豪トールHDの事業売却を検討
・世界クルーズ船大手 クルーズ船の悪夢再び
・世界航空大手 航空需要蒸発、主要36社赤字2.3兆円
・国内旅行業界 主要48社の取扱額、6月は92.9%減

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▼日本郵政 豪トールHDの事業売却を検討
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日本郵政が傘下のトールHDの事業を
売却する検討に入ったことがわかりました。

トールは日本郵便が2015年に約6200億円で買収しましたが、
業績不振が続き、2017年には
4000億円の減損処理を強いられていました。

 

減損処理までしたのに、
最終的には売却することになったというのは
情けない限りです。

日本郵便のセグメント別業績を見ると、
郵便・物流事業と金融窓口事業は
ある程度利益を出していますが、
トールが担っていた事業である国際物流事業が
大きく足を引っ張っています。

 

トールの買収は、
元東芝の西室氏が日本郵政で展開した施策です。

西室氏が自身の存在感を示すために、
離れ業として打ち出した施策だったと思いますが、
それが全くうまく機能せずに終わってしまいました。

同じように官僚が民営化した事例でも、
JTは日本郵政ほど傷つくことはありませんでした。

 

JTの場合には財務省からの天下りなど人材も豊かで、
ある程度国際化に成功できましたし、
M&Aもいくつか成功させています。

日本郵政は、途中で経営陣も変わり、
上手くいかない典型的な事例になってしまいました。

 

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▼クルーズ船業界、航空業界、国内旅行業界はすべて壊滅的
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国際情報サイト・ニュースフィアは14日、
「クルーズ船の悪夢再び」と題する記事を掲載しました。

約3ヶ月の休業期間を経て
ようやく営業を再開した世界のクルーズ船大手ですが、
またもや乗客や乗組員から
新型コロナウイルスの感染者が発生して
立ち往生しています。

 

万全の感染対策をとっているにも関わらず
発生しているもので、
今後は寄港地の確保なども課題としています。

クルーズ船事業が置かれた状況は
非常に厳しいと言わざるを得ません。

クルーズ船の有力国として有名な英国では、
クルーズ船が稼働していない為、
今は海岸にずらりとクルーズ船が並んでいる状態。

 

一部の観光客は、めったに見られない
一列に並んだクルーズ船の様子を撮影するなど
楽しんでいるようですが、何とも皮肉な話です。

クルーズ船業界は約15兆円という巨大な産業で、
雇用人数は120万人にのぼります。

顧客の数と同じぐらいスタッフの数も多いという
労働集約型の業界です。

 

世界シェアを見ると、
カーニバル:47.4%、ロイヤルカリビアン:23%、
ノルウェージャン:9.5%となっていて
ほぼ寡占化している業界です。

世界のクルーズ船の客数は近年伸びていて、
「ようやく時代が来た」と思われるタイミングでしたが、
今回の新型コロナウイルスの影響で
一気に下がってしまいました。

 

ダイヤモンドプリンセス号のような悪夢を
二度と起こしてはならないと思うと、
どれほど完璧な対策をとっていると言われても、
誰も積極的に利用できないのは当然と言えるでしょう。

120万人の雇用が失われ、
転職もままならないとしたら、
悲劇としか言いようがありません。

 

日経新聞は8日、「航空需要蒸発、主要36社赤字2.3兆円」
という記事を掲載しました。

夏場になりましたが、
当初の予想を覆し需要は回復せず、
有利子負債の合計金額は23兆円にのぼると
警鐘を鳴らしています。

航空業界も、クルーズ船業界と同様、
ほぼ死に体のような状況です。

関連して、国内旅行業界も壊滅的な状況です。

 

5月から若干上向いたとは言え、
6月の主要48社の取扱額は、前年同月比で92.9%減です。

GoToトラベルキャンペーンによって回復を目指しましたが、
岩手県など一部の地域で
都心からの観光客を敬遠する動きも出てきてしまい、
手も足も出ない状況です。

 

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▼これまでとは異なった多角化の視点も必要
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こうした状況を見ていると、事業の多角化においても
「どのようなリスクを想定するのか?」という点は
重要だと感じます。

例えば、事業の多角化を進めた鉄道会社の多くが、
ホテルやターミナルビルのデパート事業などに
手を出していますが、
今回の新型コロナウイルスの影響を受けて、
多角化した事業も全て共倒れになっていて
上手にリスクヘッジができているとは言えません。

 

これこそ新型コロナウイルスの恐ろしさとも言えますが、
今回の事態は100年に1度と言えるような状況ですから、
多角化そのものが全く無駄だと結論づけるのも
違うと私は思います。

今は社会インフラでもある鉄道事業を中心に
生き残ることを考え、その上で今後に備えて
従来と違うやり方を模索するべきです。

 

例えば、一部の鉄道会社はすでに手を出していますが、
病院や学校など少し異なった事業を
経営するのも良いでしょうし、あるいは、
鉄道と自動車は相性が良いので、
その組み合わせで事業を捉え直すと
大きなチャンスになるかもしれません。

鉄道と車を上手に連携させることで、
二酸化炭素の発生量を少なくするような
移動手段を実現することもできます。

そのような発想を持っていると、
突破口をいくつも考えることができるはずです。

 

 

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