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大前研一ニュースの視点

モビリティ事業/独排ガス規制~トヨタとソフトバンクの提携に見る両社の立場と重要性とは?

2019/01/29

・モビリティ事業 新モビリティサービス構築へ
・独排ガス規制 旧型ディーゼル車に新対策

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▼トヨタとソフトバンクの提携に見る両社の立場と重要性とは?
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トヨタ自動車とソフトバンクは4日、
新たなモビリティサービスの構築に向けて新会社
「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)株式会社」
を共同で設立すると発表しました。

両者のプラットフォームを連携させ、配車サービスや
自動運転技術を使った新事業で協業をするとのことです。

日本企業の時価総額1位と2位が提携したとマスコミが騒いでいますが、
私はそれほど大きな意味を持つ提携とは捉えていません。

この分野においてトヨタがあまりにも出遅れている状況で、
1位と2位が手を組んだと騒ぐほどのインパクトが
ないかもしれないからです。

トヨタが出遅れている一方で、ソフトバンクは
トヨタと提携しなくても十分にやっていけるだけの
様々な仕掛けを作ってきています。

ARMの買収など
ソフトバンクがこれまでに投資してきた実績を考えると、
トヨタに限らずどの自動車メーカーと手を組んでも
上手くいくはずです。

ソフトバンクとしては、
トヨタと排他的な提携を結ぶよりも
オープンな状況にしておいたほうがいいと私は思います。

もちろんトヨタとしては排他的な提携を望むと思いますが、
今後モビリティ事業がメインになってくるときには、
車を持たずにファンドなどを通じて
仕掛けの展開に注力してきたソフトバンクのほうが
フレキシビリティは高くなります。

ソフトバンクの立場から考えれば、
トヨタ1社との提携にこだわらずに、
今まで構築してきたネットワークを活用するほうが便利でしょう。

モビリティサービスの時代を見据えて、
ダイムラーやBMWなどはとにかく車を数多くばら撒いて、
新車が売れなくても使ってもらえるような状況を
構築する動きを見せています。

「Car2Go」(ダイムラー)と「DriveNow」(BMW)
というカーシェアリングサービスの統合などもこの動きの一貫です。

このような時代の流れにおいて、
トヨタはようやく4つの販売チャネルの統合を
発表したばかりで遅れに遅れています。

豊田章男社長は自社の遅れを認識し、
トヨタがモビリティカンパニーに変革する必要性を訴えていますが、
未だに会社としては「FUN TO DRIVE」
と言っている段階なので懸念を覚えます。

またそもそも今回の提携について言えば、
トヨタとソフトバンクのいずれからも
「本気」を感じられません。

新会社を設立するということは、
両社とも「本体」同士は関係ないということです。

どちらも、会社の総力をあげて取り組む
ということにはならないと思います。

新会社の出資比率を見ると、過半数を超えている
ソフトバンクが優位に見えますが、
本気で取り組むなら「縛り」を入れるべきです。

お互いこの事業分野のことに取り組む場合には、
新会社以外では禁止するなど、
「浮気」を抑制する仕掛けが必要でしょう。

そうでなければ、いずれ破綻する可能性が高いと思います。

この提携が上手くいくかどうかに関係なく、
トヨタには大改革が必要だということも重大な事実です。

豊田章男社長のスピーチを聞いて社員がどれだけ危機感を持てるか。

社員の意識が大きく変わることがあれば、
力がある企業ですから大丈夫だと思いますが、
そうでなければ、このまま取り残されてしまう可能性もあるでしょう。

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▼ディーゼル車への逆風は、嘘の代償の大きさを物語っている
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ドイツ政府は2日、大気汚染の原因となっている旧型の
ディーゼル車の買い替えと改修を促す新対策を決めました。

14都市の最大140万台が対象で、
奨励金最大130万円を受け取って車を買い替えるか、
環境性能を高める改修を受けるように保有者に求めるもので、
費用はいずれも自動車メーカーが負担するというものです。

ベルリン市などでは道路ごとに
ディーゼル車の規制を定めているそうですが、
そこまで細かく見るのは現実的には難しい気がします。

中途半端な形に終わるのではないかとも感じます。

買い替えの際にメーカーが100万円程度を
負担しなければいけないということですから、
メーカーはかなり悲惨な状況に追い込まれた
と言えるでしょう。

ディーゼル車への逆風は、
排ガス不正という「嘘」をついた代償が
いかに大きいのかを物語っていると思います。

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