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大前研一ニュースの視点

朝鮮半島情勢~南北の平和協定は、日本にとって大きな負担になる可能性が大きい

2019/01/29

朝鮮半島情勢南北首脳が11年ぶり対面

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▼南北の平和協定は、日本にとって大きな負担になる可能性が大きい
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韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長は、
先月27日南北の首脳としては11年ぶりに対面し、
金正恩氏は北朝鮮の最高指導者として初めて
板門店の軍事境界線を超えて韓国に入りました。

その後、両首脳は平和の家で約1時間40分
首脳会談を行ったほか記念食事や野外散策などで
さらに対話を重ね、夜には朝鮮半島の平和と繁栄に向けた
「板門店宣言」に署名しました。

私も「板門店宣言」を読みましたが、
かなり問題が多いと感じました。

宣言の内容は、終戦協定から平和協定という流れを、
中国と米国にも協力してもらいながら南北間で
実現していこうというものです。

今年中に平和協定まで実現させたいということですが、
何をもって平和協定の中身にするのか、
その具体的な内容や方法などについて言及されていません。

例えば、「非核化」は北朝鮮のみの非核化なのか、
それとも韓国も含めて朝鮮半島全体の非核化なのか。

このあたりは米国も懸念しているところでしょう。

今回の宣言で、文在寅大統領が署名したのは
韓国も含めて朝鮮半島全体の非核化です。

そうなると、米軍は韓国からの撤退を余儀なくされます。

仮に米軍が韓国に駐留するとしても、
核の保有は認められないでしょう。

この展開になったときには、日本にとっては
非常に大きな問題が生じます。

すなわち、中国、北朝鮮、ロシアに対する防衛の最前線が
日本になるということです。

具体的には、
日本の佐世保と沖縄が核を保有する最前線基地になるでしょう。

これは日本にとっては非常に負担が大きいと思います。

米朝対談に臨むトランプ大統領の言動を見ていると、
「これまでの大統領にできなかったことをやりたい」
という功を焦る姿勢が伺えます。

そうなると、
「自分は朝鮮半島の終戦宣言を平和宣言に書き換えた功労者」
になるため、韓国からの米軍撤退を受け入れてしまう可能性があります。

また米軍にとっては、
北朝鮮の短距離ミサイル1000発の射程圏にある
韓国にいることは非常にリスクが高く、
その意味でも韓国から引き上げることを
歓迎する気持ちもあるでしょう。

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▼今の流れのままだと、竹島問題も拉致問題も何1つ解決しない
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南北が平和協定を締結すれば韓国も北朝鮮の脅威から開放され、
北朝鮮のICBMの発射中止により米国も一安心でしょう。

しかし、いまだに北朝鮮には短距離、中距離ミサイル、さらには
ミサイル以外の大量の破壊兵器・化学兵器が残っています。

これらのターゲットになるのは日本だけになってしまいます。

日本としては、日本だけが丸裸にされているような
状況になるのを、指をくわえて見ているわけには
いかないと思います。

このような状況の中、
北朝鮮や韓国との交渉をどのように進めていくのか、
安倍首相にとっては大きな課題でしょう。

安倍首相は北朝鮮との拉致問題の解決に力を入れたいようですが、
北朝鮮側はスパイ容疑で逮捕した3人の米国人の開放や、
日本や韓国の離散家族の交流については明言する一方で、
日本と韓国の拉致問題については何一つ言及していません。

おそらく、拉致された人を探し出すのは現実的に難しく、
交渉材料に含めたくないのでしょう。

トランプ大統領としては、3人の米国人が解放されるだけで
十分な成果といえるでしょうから、
安倍首相が協力を要請しても日本の拉致問題の解決にまで
踏み込んでこない可能性が高いと思います。

韓国との関係においても、南北首脳会談の夕食会に
竹島を描いたデザートの飾り付けが出されたことに対して
日本政府は韓国に抗議しましたが、
そもそも会談が行われた部屋の置物に
竹島が描かれていることのほうを問題視するべきだと思います。

竹島問題について言えば、サンフランシスコ条約で
日本の領土として認定されているものです。

ところが、サンフランシスコ条約の発令直前に韓国が、
いわゆる「李承晩ライン」を国際法に反して
一方的に制定しました。

根本的な問題は、当時の鳩山一郎首相が抗議のために
海上保安庁を派遣したものの、
そのまま追い返されてしまったということです。

本質的に領土というものは、戦ってでも確保する必要があります。

韓国と北朝鮮がこのまま平和協定の制定へと動くとすれば、
竹島問題にせよ、拉致問題にせよ、日本は蚊帳の外に追いやられて、
何を言っても聞いてもらえない可能性が非常に高くなります。

それを踏まえて、安倍首相としては朝鮮半島や米国に対して
どのような外交交渉を行っていくのか、
重要な局面を迎えていると思います。

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