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大前研一ニュースの視点

ドラッグストア業界・ベネッセHD・カタログ通販 ~一世を風靡したカタログ通販も、新しい変化が求められる

2016/09/25

ドラッグストア業界 マツキヨが首位陥落の危機
ベネッセHD 営業赤字7億1800万円
カタログ通販 カタログ通販、逆風やまず

 

ドラッグストア業界も、コンビニ業界のような差別化が求められる時代

まぐまぐニュース!は、先月21日「マツキヨが首位陥落の危機。」
と題する記事を掲載しました。

ドラッグストア業界では、これまでマツモトキヨシとツルハホールディングス、
サンドラッグの三者が業界首位の座を争っていました。

2014年から再編を進めてきた流通大手イオンの子会社である
ウエルシアホールディングスが、売上高でマツモトキヨシに迫る
業界2位に浮上してきています。

品揃え以外の差別化として、「調剤事業」「カウンセリング営業」
「プライベートブランド商品」が現在の鍵となっており、
今後この分野で各社の競争が激化していくことになりそうとのことです。

このニュースではマツキヨに迫る勢いと報じていますが、実際にはマツモトキヨシ、
サンドラッグ、ツルハシHDなどの売上高が5,000億円弱に対して、ウエルシアは
1,919億円に過ぎず、CFSコーポレーションの1,205億円を足してみても、
まだ第2軍というところでしょう。

ドラッグストア全体の売上高と店舗数の推移を見ると、
業界として大きく成長してきたことはわかります。

店舗数は2万件に達し、コンビニに比肩するレベルになっています。

売上高も2兆円規模ですから、流通網として地位を確立したと言えるでしょう。

そして業界はいまだに群雄割拠といった状況です。

売上高3,000億円を超える企業が7社、8社も存在する一方で、
トップでも1兆円に達していません。

今後重要になってくるのは、いかに独自の特徴を出していくか?ということです。

ドラッグストアは、どこに行っても基本的に売っているものが同じで特徴がありません。

例えば、コンビニ業界ではセブン-イレブンが惣菜部門に力を入れて特徴を打ち出すなど、
各社が特徴を出そうとしています。

ドラッグストアに入ってそのような特徴を感じることはまずありません。

つい先ごろまでは中国人の観光バスがドラッグストアの前に停まって、
いわゆる爆買いもありましたが、すでにそんな光景は目にしなくなってきています。

そんな他力本願ではなく、プライベートブランドを含め、
独自の特徴を打ち出して差別化を図り、そして収益力を
高めることが求められる時代になったということだと思います。

 

受験業界、英語業界も根本的な構造変化が見られる

ベネッセホールディングスが1日発表した2016年4~6月期連結決算は、
売上高が前年同期比2%減の1056億円、営業損益が7億1800万円の赤字でした。

4~6月期で営業赤字になるのは上場以来初めて。

主力の「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」の会員数の減少に
歯止めがかかっていないことが主な要因とのことです。

4~6月期は新学期ですから、この業界は調子が良くて当たり前です。

この不調の原因をどこに求めるか?が非常に重要だと思います。

情報漏洩問題に起因する一時的な影響と考えるのか、業界の構造的な問題と考えるのか。

少子化は進み、大学全入時代となり、受験そのものが以前に比べて易しくなっています。

受験そのものにお金をかけることよりも、どこかの大学に入れればいい、
と考える人も増えていると思います。

そのような時代の流れだとすれば、これはベネッセにとって、
そして受験業界にとって大きな構造上の問題です。

ベネッセは原田会長兼社長が退任し、福原氏が新社長に就任しました。

プロ経営者の代表とも言われた原田氏は、アップルの後、マクドナルド、
ベネッセと渡り歩きましたが、結果としては非常に不運でした。

はたして新社長の福原氏は、ベネッセが直面する構造上の問題をどう捉えるでしょうか。

私は以前ベネッセ創業者の福武氏と話をしたことがありますが、
その際に福武氏が「サラリーマンを相手にしても儲からない」から
企業研修などに手を出さない、と言っていたのが印象に残っています。

親が子どものために支払う受験業界、
国家制度のある介護業界など、
ベネッセが参入している業界を見ると、
なるほど福武氏の考えにもとづいているとわかります。

しかし福原新社長がこれから舵取りをする時代においては、
全く別の新しい事業展開を求められると私は思います。

ベネッセはベルリッツという世界的な英語研修企業を買収し傘下に収めています。

ベルリッツの特徴は高額だけど丁寧に教えてくれる、というもの。

私もかつてドイツ語を習いに行ったことがあります。

数十年前ならともかく、すでに語学はオンラインで安く勉強できる時代になっています。

高額な授業料を支払ってでも、徹底的に教えてもらいたいという人が、
どのくらいいるでしょうか。

ここにも、受験業界と同じく構造上の問題が見え隠れしています。

こうした本質的な問題に目を向けて、チャレンジしていくことが、
ベネッセに求められていることだと私は感じています。

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一世を風靡したカタログ通販も、新しい変化が求められる

日経新聞は、2日「カタログ通販、逆風やまず」と題する記事を掲載しました。

ニッセンホールディングスは2日、2016年12月期の連結最終損益が
105億円の赤字になる見通しを発表しました。

11月に親会社セブン&アイ・ホールディングスの完全子会社になることが決定したほか、
千趣会などライバルも苦戦が続き、「脱・カタログ」や顧客の絞り込みといった生き残り策が
欠かせなくなっているとのことです。

この業界も、基本的に大きな構造上の問題を抱えています。

千趣会などカタログ通販は一世を風靡しましたが、今はスマホが普及し、
カタログどころかパソコンさえ使わないEコマース全盛の時代です。

カタログ通販の需要は明らかに低下しています。

しかもカタログ通販は、Eコマースに比べてコストも高くつきます。

印刷代が安い米国を活用するなど工夫はしているようですが、
それでも割高と言わざるを得ません。

カタログが届いて実際に注文が入るのは数日間だけですから、
費用対効果も良くないでしょう。

こうしたことを踏まえて、問題解決に乗り出さなければいけません。

たとえばカタログにのせる内容を売上トップ10%に絞り、
カタログそのものを薄くしてコストダウンを図ることもできるでしょう。

あるいは、通販生活のように「物語性」を全面に出し、
しかも著名人・有名人が推奨することで販売の差別化を図るのも1つの策です。

通販生活は、長年この方法を使い、すでに固定客を掴んでいるおかげで、
他社のようには苦戦していません。

ニッセンにしても千趣会にしても、かつてのカタログ通販のやり方では
通用しない時代になったということを認め、この構造上の問題にどう取り組むのか、
ここが非常に重要なポイントだと思います。



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