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週末だけのグローバル投資コラム

ヘリコプターマネーの本質 (3)ますます読めなくなった黒田日銀の行動基準

2019/01/28

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「株価指数連動型上場投資信託(ETF)買い入れを年3兆3000億円から6兆円に倍増する」

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昨日の日銀による決定には驚きました。

ここで動くこと自体がどうかと思うのに、
その内容と理由付けはさらにヤバいです。

今までも日銀が「別の問題の尻拭い」に使われる兆候は出ていました。

今後それが加速するのではないかと危惧します。

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弊社はもともと、「今月は政策変更の必要なし」と考えていました。

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- 消費税引き上げは、すでに延期で決着が着いている(景気回復を演出する必要なし)

- 参院選挙も終わり、安倍政権の支持率は高い(株高を演出して政権を支える必要なし)

- 世界を見ても危機をいったん脱し、米株は史上最高値。
日本株も連れ高している。
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必要がないときに弾を撃つ必要はなく、
本当に危機が訪れたときのために温存するが良しと考えたのです。

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追加緩和を予想した人々も「国債買い入れ増額」や
「マイナス金利の深堀り」がメインと考えていました。

ETF買い入れ増額はそのオマケ程度。

ヘリマネも喧伝されていましたが、
そもそも金融政策では達成が難しい政策です(後述)。

そして結果は
「株価指数連動型上場投資信託(ETF)買い入れを年3兆3000億円から6兆円に倍増する」
というものでした。

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その理由は

「新興国経済の減速や英国のEU離脱(Brexit)で不確実性が高まっているから」

というもの。

しかし当の英国株は、離脱前の株価をはるかに上回っています。

FRBもECB(欧州中央銀行)もショックからの回復途上にあるとして、
金融政策を変更していません。

G7やG20では日本以外の誰も「今が世界的危機」だとは認識していませんでした。

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どうやら日本だけが、円高デフレに危機感を抱いていた感じです。

しかしその対策として「ETF買い入れ増額のみ」ではおかしすぎます。

「真の理由」は他にあるのでしょうが、今回の理由付けはヤバいと感じました。

逆にこの理由付けが本心だとしたら、もっとヤバいです。

現状認識能力にも作戦企画能力にも疑問を持たれてしまいます。

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これは、政権の経済対策と歩調を合わせた株価対策にしか見えません。

デフレ脱却に対してはさほど効果なく、「追加緩和」と呼ぶのもためらわれます。

まるでバーベキューの火力が弱くなったからと言って、
マッチ1000本に火をつけてコンロに放り込むようなもの。

効果はゼロではないですが、副作用とコストが大きくて効率が悪すぎると感じます。

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確かに株価上昇は、デフレ脱却の景気回復の起爆剤になりえます。

しかしそれだけでは、良いサイクルを持続させることはできません。

6月の全国消費者物価指数(CPI)は前年比-0.5%となり、
異次元緩和前のデフレ状態に逆戻りしました。

いくら円安・株高に誘導しても、
それだけで景気やインフレ率を上向かせ持続させることはできないということです。

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毎年6兆円のETF購入は、強烈な株価対策です。

時価総額500兆円とすれば、そのうちたった1.2%と思うかもしれません。

しかし1営業日あたり240億円を買い続けるのです。

3営業日休むと、
遅れを取り戻すために約1000億円を買わねばならなくなります。

1日当たりの売買代金を2兆円と仮定しても、
約5%が日銀による買いになってしまいます。

それは果たして自由な国の市場なのかと思います。

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2013年4月4日、最初の「異次元緩和」の目的は「デフレ脱却」でした。

2014年10月31日、追加緩和の目的は「好景気演出」と「消費増税の正当化」でした。

2016年1月29日の「マイナス金利導入」は、
絶望的になったデフレ脱却に最後のムチを入れ
責任とコストの一部を銀行に転嫁したように見えました。

今回2016年7月29日の「ETF買い入れ倍増」は、
政治的妥協に立脚した株価維持が目的に見えます。

目的と手段がだんだんズレて行き、あらぬ方向へ向かっているように思えるのです。

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なぜ、このタイミングで株価を後押しする必要があったのか。

政権や関係者との「取引」「妥協」の結果なのか。

絶望的になった「デフレ脱却」という目標に対し、
まだ諦めていないというアピールなのか。

黒田日銀の行動基準がますます読めなくなりました。

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ワイルドインベスターズ株式会社

 

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