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週末だけのグローバル投資コラム

中国新型コロナウィルスの衝撃 (22)感度・特異度が示されない抗体検査は有害ではないか?

欧米諸国で抗体検査を行う動きが活発化しています。

たとえば米カリフォルニア州サンタクララ郡で試験的に行われた3300人は、
2.8-4.2%程度に抗体反応があったとのこと。

「PCR検査などで陽性が判明した人の50-80倍、という驚くべき数字」ということです。

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カリフォルニアで抗体検査、予想より遥かに多い罹患率が判明
土方細秩子 (ジャーナリスト)
2020年4月19日
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/19372
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ロサンゼルス郡では4月16日、新たに55名が死亡し、累計の死亡者数は455名となった。

感染者数は1日で350名となり、累計で1万854名。

これまで郡が行った検査数は7万件以上で、およそ11%が陽性だったことになる。

カリフォルニア州全体では感染者は731名増加で計2万8888名、死亡者は1021名だ。

ただし新規感染者数は横ばいあるいは減少の傾向が見られ、
ニューサム知事とガルセッティ市長は外出禁止令の緩和と
経済再開に向けての道筋を探り始めている。

その中で重要とされているのが抗体検査の実施だ。(略)

世間にはこうした無症状で感染の自覚がないままに治癒し、免疫を得ている人々がいる。

それを割り出すために始まった抗体検査だが、最初の試みで思わぬ結果が出た。

ABCニュースの報道によると、カリフォルニア州サンタクララ郡で試験的に
行われた抗体検査を受けた3300人のうち、抗体反応があったのが2.8〜4.2%程度だった、
というのだ。

サンタクララ郡の人口は200万人ほどで、郡内の感染者は公式には1000人程度、
と発表されていた。

しかし抗体検査の結果から、実際には4万8000〜8万1000人程度がすでに感染していた、
という予測が成り立つ。

PCR検査などで陽性が判明した人の50〜80倍、という驚くべき数字だ。(略)
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さらにNY州のクオモ知事は、計3000人の13.9%に抗体が確認されたと発表。

「州の住民約270万人がある時点で新型コロナに罹患(りかん)したと推計される」
と述べています。

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NY州の13.9%に抗体確認、270万人に相当−3000人検査でクオモ知事
Angelica LaVito、Kristen V. Brown、Keshia Clukey
2020年4月24日 7:44 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-04-23/Q99AVWDWRGG001?srnd=cojp-v2
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    感染が最も深刻なNY市に限れば21.2%に抗体が確認された
    致死率は約0.5%−確認症例と死者数に基づく推計値を下回る

米ニューヨーク州のクオモ知事は23日、
新型コロナウイルスの感染拡大の実態を把握するため実施している抗体検査で、
州内40カ所で無作為抽出で調べた計3000人の13.9%に抗体が確認されたことを明らかにした。

クオモ知事はこの比率に基づけば、
州の住民約270万人がある時点で新型コロナに罹患(りかん)したと推計されると述べた。

これは、重い症状が出た患者を主な対象にした州の検査に基づく公式統計の約10倍に相当する。(略)
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なぜ抗体検査をするかと言えば、

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1. 集団免疫の進捗度を計測するため

2. 経済活動再開の時期を探るため
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です。

英国では抗体検査で免疫が確認された国民に
「免疫証明書」を発行し外出を許可する計画を立てています。

逆に言えば、まだ抗体を獲得していない国民に対しては
防御的な生活を続けてもらうということになります。

そして免疫獲得者が増えるにつれ、経済活動を正常化してゆくという算段です。

その試み自体は合理的で、やることに対して私は反対しません。

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新型コロナ 英国が経済正常化へ「免疫証明」検討 抗体検査に疑問も
2020.4.23 17:47
https://www.sankei.com/world/news/200423/wor2004230022-n1.html
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【ロンドン=板東和正】新型コロナウイルスの感染が拡大する中、
欧州諸国が免疫の有無を調べる抗体検査に相次いで乗り出している。

英国は、経済活動を早期に再開させるため抗体検査で免疫が確認された国民に
「免疫証明書」を発行し、外出を許可する計画を検討している。

ただ、抗体検査に技術的な課題があり、検査が順調に進まないことが懸念されている。

英国のハンコック保健相は2日、免疫証明書の発行を検討していると発表した。

証明書とともに、免疫を獲得していることが一目でわかるリストバンドを
提供する構想も明かしたが、まだ実現していない。

英国ではすでに一部の新型コロナの患者を対象に抗体検査を行っており、
ハンコック氏は記者会見で、免疫証明書が発行できれば
「免疫を得た人を可能な限り通常の生活に戻せる」と強調。

自身も3月下旬に新型コロナに感染し、一時、自主隔離を余儀なくされた同氏は、
英BBC放送の番組で「私には免疫が備わっており、再び感染する可能性は低い」と述べた。(略)
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しかしいつも思うのですが、
このような検査の「感度や特異度」が明示されないのはどうしてでしょう。

今回は市中感染がどれぐらい広がったかを調査するわけですから、
事前確率がわからないことは理解できます。

それでも有病率が低いのに検査を増やすと偽陽性が増えてしまいます。

逆に多い状況でやれば偽陰性が増えてしまいます。

特に確定診断の場合は、特異度が高い検査で陽性が出ないとあてになりません。

検査精度が低くなれば低くなるほど、現状認識を誤る可能性が高くなるのです。

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参考
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【週末だけのグローバル投資】
中国新型コロナウィルスの衝撃 (16)日本の戦略は悪くない。
PCR検査と検査キット、検査精度と事前確率の話
2020年04月09日10:26
http://blog.livedoor.jp/contrarian65-wild/archives/51268173.html
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今回だけではありません。

「とにかく抗体検査をしろ!」という人の中には、
「PCR検査は正確ではないから」と理由を付ける人がいます。

確かにPCRの感度は7割程度と言われています。

しかし一般的に、抗体検査の精度はそれより低いと言われています。

抗体検査の感度や特異度を示すことなく
「PCRはあてにならない」と腐すのはフェアではないと思うのです。

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特異度が低い抗体検査をもとに判断したら、数多くの偽陽性を出してしまうことになります。

「すでに抗体を獲得した」
という間違ったお墨付きをもらった人々が、街を出歩くことになるのです。

それはいとも簡単に、クラスタ発生と医療崩壊を引き起こします。

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なぜ抗体検査をそれほど急ぐのか。

ひとつには経済活動再開を急ぐ人々の思惑があるでしょう。

偽陽性でも何でも「集団免疫を獲得した」という抗体検査の結果が出たら、
それを強く主張することができます。

それでパンデミックになっても、その判断をした人の責任にすれば良いのです。

そのためには、検査の正確性や感度・特異度など余計なことは知ってほしくありません。

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さらに穿った見方をすると、検査キット大量に売りたい人々もいるでしょう。

インドは5億個超の抗体検査キットを発注したものの、正確性に疑問を持ち一時中止。

「これが標準的な検査キットです」「国民に安心を与えます」
とでも売りつけられたのでしょうか。

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インド、コロナ抗体検査の一時中止を指示、正確性に懸念
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-southasia-idJPKCN22505R?
2020年4月23日 / 10:57
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インドは、新型コロナウイルス感染拡大の状況把握のための抗体検査について、
正確性に懸念があるとして、一時中止を指示した。保健当局者らが明らかにした。

インドは、検査キットと医療機器の不足から、
新型コロナの感染状況を把握するため他の多くの諸国に追随して
標準的な簡易抗体検査を導入。

今月初めに保健当局が血液による抗体検査を承認した後、
中国に5億個超の検査キットを発注した。

しかし、医学研究評議会・感染学部門トップのR.R. Gangakhedkar博士は、
抗体検査の結果に矛盾が生じているため、保健当局に検査の一時中止を求めたと明らかにした。

同博士は「これはわずか3カ月半の間に開発された第1世代の検査であり、
改良していく必要がある。(結果の)変動幅は無視できない」と述べた。

保健当局は、機器の精度確認のため、各州に当局の衛生専門家を派遣しているという。

スペインを含む欧州諸国からも、中国が供給したキットの品質について苦情が出ている。(略)
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「検査・検査・検査」と言っていたあのWHOでさえ
「抗体検査は効果の面からも不確実な点が多い」としています。

「抗体検査より今は感染者発見を優先しろ」とのこと。

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新型コロナの抗体検査 「不明点多い」 WHO危機対応統括
2020年4月18日 10時27分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200418/k10012394171000.html
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欧米各国で外出制限措置の解除や経済活動の再開を判断する際の指標の1つとして
議論されている新型コロナウイルスの抗体検査を巡り、
WHO=世界保健機関の危機対応の責任者は検査の技術は十分に検証されておらず、
抗体に関しても不明な点が多いという認識を示しました。

WHOで危機対応を統括するライアン氏は17日の記者会見で、
新型コロナウイルスの抗体検査を巡り、
「どのような検査をするかを明確にする必要があるが、効果の面からも不確実な点が多い」
と述べて、検査の技術は十分に検証されていないという見方を示しました。(略)
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WHO「抗体検査より感染者の発見・治療を優先すべき」
2020年4月21日 4時50分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200421/k10012397751000.html
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新型コロナウイルスの抗体検査について、
WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は記者会見で、
現時点では、感染者の発見や治療などを優先させるべきだという考えを示しました。

人口のどれくらいが新型コロナウイルスに感染し、
抗体ができているかを調べる抗体検査について、
WHOのテドロス事務局長は20日、スイス・ジュネーブの定例記者会見で、
「抗体検査は感染したことがある人を確認するためには重要だが、
感染が疑われる人を発見して診断し、
隔離と治療を行う検査のほうが中心的な手法だ」と述べ、
現時点では、感染者の発見や治療、
それに隔離などを優先させるべきだという考えを示しました。(略)
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日本の感染症学会は海外で市販されている検査キット4種の性能を評価。

サンプル数は少ないながら、
「性能差が大きく、当該ウイルス感染症の診断に活用することは推奨できない」
としています。

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抗新型コロナウイルス抗体の検出を原理とする検査キット4種の性能に関する予備的検討
日本感染症学会:2020年4月23日
http://www.kansensho.or.jp/modules/news/index.php?content_id=150
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/news/gakkai/covid19_kensakit_0423.pdf
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【方法】
血中の抗新型コロナウイルス抗体の検出を原理とする検査キットが海外で市販されている。

今回は、既に海外で市販されている検査キット4種の性能評価のための
予備的検討を10名の患者血漿/全血を用いて行った。

なお、IgM および IgG の陽性結果は区別せず、
少なくともいずれか一方が陽性となったものは陽性と判定した。

今回用いた血漿/血液検体が採取された患者は、同時に鼻腔スワブも採取され、
RT-PCR 検査も施?されており、両結果を比較・検討した。

【結果】
表 1-4 に A 社、B 社、C 社および D 社の患者血漿/全血を用いた予備的検討の結果を示した。

なお、RT-PCR の結果は、
陽性および検出感度未満と判定されたのはそれぞれ5 名ずつであった。

A 社、B 社、C 社、D 社のキットの感度は、RT-PCR の結果と比較して、
それぞれ 2/5、0/5、3/5 および 4/5 であった。

一方、いずれのキットの特異度も 5/5 であった。

【考察】
新型コロナウイルスに対する特異抗体を検出することを原理とする診断キットの性能は、
キット間の差が大きい可能性がある。

血中の新型コロナウイルス抗体を検出するキットには、定められた評価法がない。

今後、抗体価の測定が可能な enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA)など、
精緻な方法を併用して評価することが望まれる。

現時点において、抗新型コロナウイルス抗体検出キットを当該ウイルス感染症の
診断に活用することは推奨できず、疫学調査等への活用法が示唆されるものの、
今後さらに詳細な検討が必要であると思われた。(略)
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さらにロシュCEOは他社の抗体検査キットを「失敗作」と酷評。

しかし他社製品を非難するときでも、
お互いに感度や特異度を示してくれると助かるのですが。

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新型コロナ抗体検査薬、他社の既製品は失敗作−ロシュCEOが酷評
2020年4月23日 0:16 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-04-22/Q96XJNDWX2PT01
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    正確性の確保、極めて難しい−英国の検査アプローチも批判
    ロシュ、通期利益と売上高は1桁台前半の伸びへ−予想据え置き

ロシュ・ホールディングのセベリン・シュバン最高経営責任者(CEO)は、
これまでに発表された他社の新型コロナウイルス抗体検査薬はひどい失敗作だとこき下ろした。

これまでの抗体検査薬は信頼性が低く、
英国やスペイン、米国の一部は使い物にならないと断定した。

シュバンCEOによると、このような検査薬は開発が容易な一方、
正確性の確保が極めて難しいことが理由だという。(略)
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人々が不安や恐怖に陥っている時、それに乗じて利益を得ようとする人々がいます。

最近は医薬装備品を売る人々の中に、そのような人々が混ざってきたのでしょう。

幸いなことに日本ではそれに騙される人は少なく、
他国よりも緩やかな感染拡大で済んでいます。

これからも科学的・理性的な判断を心がけ、何とか凌いでいきましょう。

 

(終)

 

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気になるチャート20200424 WTI原油先物5月限、一時「価格がマイナス40%」
http://blog.livedoor.jp/contrarian65-wild/archives/51268483.html

【週末だけのグローバル投資】中国新型コロナウィルスの衝撃 (21)欧州の超過死者数はコロナ死者数の1.3-2.3倍
http://blog.livedoor.jp/contrarian65-wild/archives/51268463.html

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