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週末だけのグローバル投資コラム

中国を米金融市場から締め出すか? (2)「インデックス投資が危険」という極めて例外的な局面

半年前の弊社投資レポート「DEEP INSIDE」 
2019年03月号「深刻度を増す中国の債務問題」では
   
3.    中国A株組み入れ比率引き上げのインパクトは小さい 

の章で、MSCIが人民元建て株式(A株)の組み入れ比率を段階的に
引き上げることについて解説しました。

そして最後に、弊社はこの決定に疑問を投げかけました。

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しかし米国が中国を「敵国認定」した今、資金や技術を横流しする組織には
厳しい視線が向けられることになるのではないでしょうか。

さらに中国の資産価格が急落したり、売買停止になったりすれば、
今回の組み入れ比率引き上げは大きな問題になるような気がしています。
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弊社はこの決定を

「実質的な中国に対する資金の横流し」

ではないかとすぐに疑いました。

それは米国の世界戦略に真っ向から逆らう行動です。

米政府から何か言われそうですし、
また中国株が暴落して顧客が大損すれば信用問題になるでしょう。

だから「社内で反対意見は出なかったのか」と疑問に思ったのです。

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株価指数を提供している会社は、
算出方法を操作することで特定の国を優遇することができます。

組み入れ比率を上げてやれば、年金や個人投資家など指数連動型の運用(インデックス運用)をする投資家が自動的に投資を増やしてくれるからです。

普段はそこに、政治的意図を入れることはないと思います。

しかしこの決定は、トランプ政権の方針に真っ向から反対するものでした。

人民元の自由化が進んでいないにもかかわらずIMFがSDRに組み入れたときのように、
「特別に支援したい」という強い意思が見えたのです。

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ただし私は、米国政府は「苦言を呈する」ことぐらいしかできないだろうと思っていました。

いくらなんでも株価指数を提供している会社に対し、
「あの国を組み入れ比率が高すぎる」などと注文をつけることはできないと思ったからです。

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しかし今回の報道で、目から鱗が落ちました。

米国の年金に中国株への投資を制限させてしまえば、
中国株の組み入れ比率が高い株価指数は使われなくなります。

株価指数はメジャーになるほど使う人が増えるのですが、
逆に言えばトップから転げ落ちると挽回が難しいのです。

トップを守るためには、
大口顧客である年金のために中国株の組み入れ比率を制限せざるを得ません。

すると指数に連動しているETFも中国株比率を下げることになります。

結果として「中国株だけが売られ、他国の株がプロラタで買われる」という
資金フローが生まれるのです。

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つまり

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米国政府 → 指数算出会社
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という直接的な経路が使えなくても

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米国政府 → 年金 →  指数算出会社 → ETFなど他のインデックス運用
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という経路で、中国企業を米国のエクイティファイナンスから締め出すことができるのです。

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たとえば日本がこれをやられたら、株価が急落して外国企業にどんどん買収されるでしょう。

しかも「完全に排除するか」「ある程度は許してやるか」などの匙加減も米国の思うがまま。

本当に恐ろしい戦略を考えつくものだと思います。

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さて今回の動きは、極めて例外的な局面が到来する可能性があることを示しています。

それは

「インデックス投資(家)が一方的に損をする」

という、めったに見られない局面です。

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インデックス投資はご存知のように、株価指数に連動します。

将来的に組み入れ比率が下げられることがわかっていても、
インデックス投資家は動けません。

(気の利いた人はその部分だけ売りヘッジをかけるかもしれませんが)

それ以外の投資家はさっさと先に逃げてしまうので、株価(と時価総額)が下がります。

実際に組み入れ比率が引き下げられるまで、
インデックス投資家が踏ん張って損失を一気に引き受ける格好になります。

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個人投資家であればこのことに気付かない人や、
気付いていても対策を取らない人もいるでしょう。

たとえばMSCIオールカントリー・ワールド指数(ACWI)における中国株の比率は3-4%程度。

これがゼロになったところで影響は少ないし、気付かない人だっているはずです。

ただし機関投資家の場合、そういうわけには行きません。

委託者の利益最大化に努めなければならないという
フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)を負っているからです。

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しかしMSCI新興国になると中国株の比率は(香港株を入れて)3割強。

さすがにこれがゼロになったら気付かない人はいないと思います。

するとやはり、中国株や中国に深入りしている銘柄は売るしかありません。

中国株が含まれていない先進国の指数でも、関連銘柄は大きな痛手を受けます。

これは早い者勝ちであり、逃げ遅れた人が損を被ってくれるのです。

(終)

 

 

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